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柿の皮を食べて育った豚 南砺市発ブランド豚「なんとポーク」の魅力

特集企画12月号でご紹介した杉本 清が育てた豚は、生肉(なまにく)以外にもその加工製品が「なんとポーク」ブランドの名で流通している。ラインナップは「なんとソーセージ」「なんとベーコン」「なんとベリーハム」の3商品。「ビールやワインによくあう」と食通の間で評判が高い。ソーセージは熱湯で軽く茹でて、ベーコンやハムはフライパンで焼かずに生のまま食べるのがお勧めだそう。南砺市自慢のブランド商品「なんとポーク」の魅力に迫る!

◆なんとポーク製品はどうやってつくるの?

なんとポーク加工品を製造しているのは、地元で100年以上続く老舗の花島精肉店。調理施設内で数名のスタッフが手間と愛情をかけて手づくりしている。原材料はすべて南砺市産のものを使用。もちろん雑肉や増量剤などのつなぎは使ってない。種類は「プレーン」「バジル」「たまねぎ」「ピリ辛たまねぎ」「ピリ辛」「ブラックペッパー」の6つ。1工程に8Kgから10Kgの肉を使用して、1種類ずつ丁寧につくり上げている。


精肉店の花島社長が自らソーセージづくりを実践して、その工程を説明してくれた。まずは、3日間塩漬けして熟成した肉と脂を用意して、あら挽きする。ハーブ類を加えてよく撹拌。その後、腸詰めしてから成形する。


最後にスモークボックスに入れて、桜チップで燻製する。作業中に肉の温度が上がって劣化することを防ぐために、ステンレスの作業台上は常に氷を置いて低温を維持している。ラインに乗せて大量生産しているのではなく、町のお肉屋さんが、調理場でソーセージをひとつひとつ丁寧につくっているイメージ。正真正銘の手づくりソーセージだ。

「なんとベーコン」は豚バラ肉を7種類の香辛料に長時間漬け込んで熟成させ、桜のチップで3回燻してつくる。「なんとベリーハム」は8種類の香辛料に漬け込み、渦巻き状にグルっと巻き込んで成形し、その後、燻製させてつくられている。いずれも、柿の皮で育った上質の豚肉を使用し、ハーブの種類、熟成時間、燻製の回数などにこだわってつくりあげられた自信ある商品だ。

◆なんとポークはどうして生まれたの?

南砺市は2004年に8つの町村を統合して生まれた新しい市だ。各町村は古くからの伝統工芸、名産品があるものの、「南砺(なんと)」と地名が付いた名産品がない。そこで2代目市長が「畜産物を使って名産品を作ってはどうか」と提案し、2009年に「南砺市農畜産加工ブランド開発協議会」が立ち上がった。

この地域にはおいしい豚肉がある。福光地域原産の三社柿による干柿も有名。そこで「今まで畑に捨てていた柿の皮を豚に食べさせ、その豚を商品化したら南砺市らしい名産品になるのではないか」という案が浮上した。柿の皮はビタミンCやポリフェノールが多い。それらを食べた豚は健康に育ち、味もよくなるはずだと。

ブランド開発協議会は、杉本をはじめとする地元の畜産農家、精肉店、スーパー経営者、その他有識者を構成メンバーとした。

◆苦労を乗り越えての商品化

事業推進に尽力した(株)なんとポーク社長永井 正夫は、協議会が立ち上がってから商品化が実現するまでの道のりは決して容易なものではなかったと振り返る。

まずは行政から補助金を得る段階からつまずいた。農林水産省が推進する「6次産業化」への適応に申請したものの、承認されるまでに何か月もの時間を要した。協議会メンバーにもそれぞれ自分の仕事がある。「なぜそこまでして新ブランドを立ち上げなくてはならないのか」「商品が開発されたところで、本当にそれが利益に結びつくのか」という疑問の声も上がった。先行きが見えない状況でメンバーの戸惑いも大きく、会議中に大声が鳴り響くこともあったという。


柿の皮処理も当初の予想よりも手間がかかった。柿農家が皮をむいてカゴにいれておくと1日で腐り始めてしまうのだ。柿の皮は栄養分が高いだけに、発酵も進みが早い。そのため、11月に柿の皮を採取したあとは、1日と待たないうちに急速冷凍して保存しなくてはならなかった。その後は人手のある農閑期を待って、年が明けてから飼料化作業に入る。柿の皮を少量ずつ解凍しては乾燥させ粉砕する。それを何度も繰り返して、やっとのことで1年分の飼料を確保できる。もともと廃物利用から生まれた案ではあったが、その工程に思いがけなく手間とコストがかかってしまった。

挫折を繰り返しながらも問題をひとつひとつ解決していった。発案から2年以上の月日が経ち、2012年1月、ついに株式会社なんとポークが立ち上がり、その商品化が実現した。

花島精肉店社長は「ご近所の養豚場で育った豚を、僕たち肉屋が加工して、知り合いの販売店さんが卸している。そんな感じです。なんとポークは、日常でもつながりがあるご近所さんが集まってつくった商品なんですよ」という。


販売会社の永井社長は「杉本さんがつくる豚は間違いない。それを老舗の花島精肉店に加工してもらっているわけだから自信はある」とその味に太鼓判を押す。商品化に携わる業者同士が信頼関係でつながっているからこそ、手を抜くことのない、こだわりのおいしい商品が産み出されているわけだ。

◆食通に評価が高い「なんとポーク」、お試しあれ

富山の豊かな緑とおいしい水で育った豚と柿のコラボ。南砺市のプライドをかけた「なんとポーク」は、生肉もその加工品も高く評価されている。とはいえ、手づくりゆえに大量生産が難しく、賞味期限に限界があるため、入手が難しい商品でもある。


北陸新幹線の車内販売で取り扱うオファーがあったものの、大量生産が難しいことから話は頓挫した。東京からの依頼も時おりあるものの、短い賞味期限内に売り切る難しさから、断念せざるをえないことが多いという。ここはぜひ現地に足を運んで、味わってみることをお勧めする。

取材・文 沖山ナオミ

デリシャスタイムのレストランプロジェクト

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