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Yasuhiko Matsuno Part-1

蜜蜂にぞっこん、すっかり恋してしまったオヤジがいる。
しかも、その相手は「日本蜜蜂」。

優しく穏やかな性質だが、とても気まぐれで、ある日突然姿を消してしまうこともある。
その蜜はひとたび口にすると虜になるといわれるほどの禁断の味。
だが、その量は極めて少ない―。

その男・松野保彦は、東京都の最南端、町田市で日本蜜蜂を飼っている。
しかし、彼はプロの養蜂家ではない。
日本蜜蜂を愛しているから、飼っている。
松野の頭の中は寝ても覚めても日本蜜蜂のことばかり。
「もう、たまらなくかわいいですよ。見ているだけで癒されますね。何時間でもそばにいたい」

ああ、蜜蜂愛が止まらない。

◆ペットのように庭で蜜蜂を飼う

松野が日本蜜蜂の虜になって今年で7年目。お互いを理解し合える蜜月関係が築けたのは、ほんのここ数年だそうだ。

彼が日本蜜蜂に興味をもったのは、妻の実家敷地内に倒れていた枯木に蜂の巣を見つけたことがきっかけだった。その蜜を味わってみたところ、芳醇な自然の甘さがたまらない。松野は「なんとか自分で飼えないものか?」と考え、蜂の巣を木箱に移して家に持ち帰った。まるでペットのように蜜蜂を庭で飼おうとする松野に、当然家族は大反対。とはいえ、すでに蜂に心奪われていた松野の決意は固く、自宅の庭に巣箱を設置した。以降、朝夕の蜂の巣チェックは彼の日課になった。しかし、松野の献身的な愛情も蜂には伝わらず、ある日突然、予告もなく飛び去ってしまった。

「一体なぜ、どうしていなくなってしまったのか…」愕然と崩れ落ちる松野。
人というのは逃げられると追いたくなるものだ。元来、好奇心旺盛な彼は、「養蜂」に関する専門書やインターネット上の関連情報を読みあさり、日本蜜蜂の飼い方を研究した。

◆分蜂群(ぶんぽうぐん)捕獲作戦

日本蜜蜂の飼育は通常、“分蜂群”を捕まえて始めるそうだ。松野はまず、巣箱に蜜蝋(みつろう)を塗って分蜂群を誘引することから始めた。一つの群れが二つに分かれる“分蜂”の時期はだいたい年一回。桜が咲く時期という。成功しない場合は、また翌年の分蜂シーズンまで待つしかないのだ。だが、努力も虚しく誘引作戦は二年続けて失敗した。

松野は次の手に出た。静岡県にある養蜂場が、日本蜜蜂の蜂群を販売していることを知った。さっそく車で出向いて蜂群を購入したものの、東名高速を走って自宅に帰り着く前に、巣は箱の中で崩落した。どんぶり2杯分くらいの蜂が死に、蜜が流れ出てしまったそうだ。気を落としながら自宅に戻った松野は、まだ巣内に女王蜂が残っていることを期待して、そのまま庭に設置した。しかし、残りの蜂たちもいなくなり、巣箱はもぬけの殻となっていた。翌年も静岡県の養蜂場に赴いて、蜂の巣を購入した。だが、冬を越すことはできなかった。

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