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エンタ飯 ENTAMESHI  <Vol 1>

東京国際映画祭の舞台裏
~スタッフたちの知られざる食事情

今年で記念すべき30回を迎えた日本最大の映画の祭典、東京国際映画祭。

スターたちもやってくる華やかな上映会場の舞台裏では、たくさんのスタッフたちがもくもくと働き、映画祭を支えている。そんな彼らの食事事情について、東京国際映画祭 オペレーショングループ 運営ユニット ユニットリーダーの安田美保さんに聞いた。

10日間でなんと8000食以上のお弁当を発注 平均予算は630円

映画祭が開催されている10日間は毎日、昼と夜にお弁当が出ます。スタッフにお弁当が出るのは、買いにいく時間がないからですね。もちろん食べに出る時間もない。会期中だけとはいえ、ここまで昼夜ばっちり出るのは、珍しいかもしれません。ほぼ24時間体制で動いているからというのもありますが、恵まれているなあと思います。

お弁当の数は日によってちがい、一番多い時には一回520食になります。会期中のトータルでは8000食を超えますね。 毎年レッドカーペットなどがあるオープニングの日が一番多くなるのですが、この日のお弁当は必ず片手で軽く食べられるものを出します。これは私の前任者の頃から長年ずっと守られているもので、おにぎりをさっとバッグに入れて、自分の現場で食べられるようにという配慮からです。この日は外で動いている人が多いので、みんな喜んでくれています。

予算は一食平均630円くらい。とはいえ、いつも600円前後のものというわけではなく、実はすごく数が出る時には290円のお弁当を入れたり、その後も400円、500円のもの、逆に1000円程度する時もあったりと、値段はかなり違います。それらすべてを平均すると630円になるということです。

毎食お弁当を食べる人を飽きさせないように、お店選びは苦労の連続

一番苦労するのはお店選びですね。実は10日間の20食で18店舗くらい使っていますが、400食を超えてくると、数が多すぎて作っていただけないお店もかなりあります。なるべく同じメニュー、同じ食材が続かないように。さらにおいしくて、平均的な値段のものを探すのは本当に大変です。今のところ好評なのはオムライス。焼肉なんかも人気です。

一回のお弁当は最低3種類用意し、そこから選んでもらっています。種類はもっと多いこともありますよ。実は種類によって値段がちがうこともあるのですが、みんな気がつかないで食べています(笑)必ずしも高いものから減るわけではないですね。

 

見た目にもこだわっていますよ。お弁当の箱ってたいてい四角じゃないですか。だから、四角いお弁当をなるべく少なくしようとしているんです。丸い形だったり、折りだったり、カレーの場合なら楕円形、ランチボックスのようなものだとか。器も毎食同じにならないようにと考えています。それだけでもずいぶん気分が変わりますからね。

 

一番つらいのは余ったお弁当を捨てること 「残数ゼロ」は一度だけ実現

もう一つ、とても気をつけているのは残数です。ゴミ周りもうちのチームで担当しているのですが、食べ物を捨てるのは本当に忍びないというか、つらい。私が担当した最初の年はかなり多くのお弁当が残ってしまいました。そこで、一昨年くらいから、責任を持って食べてもらうため、事務局員は会期中に必要なお弁当の数をひとりひとり申請するようにしてもらって、食べない人は申請しないでくれとお願いしています。おかげで残数も減ってきて、いまはだいたい30食残るか残らないか、ですね。とにかく、できるだけ残りの数だけは減らしたいです。

「残数ゼロ」は5年前に一回だけ実現しました。その時は昼も夜も人気店のお弁当で、値段が少し高めだったこともあるかもしれません。たぶん持って帰ったり、深夜に2個目、3個目を食べたりした人が多かったように思うんですけれど。もちろん、食中毒は避けたいので、その時は自己責任でね、と必ず声はかけますが。

学生インターンの活躍で、なぜか食べ残しも減る

お弁当が余った場合、すべて開けて中身を分別して捨てます。以前は全然分別されていなくて、ボランティアさんがごみ箱からお弁当箱を出して残飯を分別していたような時期もあったのですが、いまは「ゴミステーション」という場所を作り、そこで学生インターンが「それはこちらへどうぞ」と誘導する形で、各自に分別して捨ててもらっています。それをやっていくうちに、みんなマナーがよくなってきました。結果、食べ残しも減っていくんですよ、分別が面倒くさいから(笑)。

 

お弁当とゴミの処理を担当している学生インターンは約20名。昼、夜それぞれ10名のシフトで働いてくれています。お弁当は基本事務局内で食べてもらうのですが、イベント会場を離れられないスタッフには彼らがお弁当を届けにいきます。その際に毎回「お疲れさまカード」というのを書いてくれているんです。たとえば「今日は5日目、折り返しです。体調に気をつけて、お弁当をたくさん食べてがんばりましょう」とか、手書きで書いてくれる。もらったスタッフはとても嬉しいみたいですよ。また、最終日に学生インターンが「お疲れさま」と書いたタグをお茶につけて、みんなに配ってくれた年もありました。400枚くらいありましたが、全部手書きのタグです。学生さんがそれだけ熱心にやってくれると、事務局員もきちんとしなくてはと思うらしく、ゴミの分別も一生懸命やってくれるようになりました(笑)なかなかいい相乗効果が生まれています。

華やかに見える映画祭ですが、裏方の仕事は毎日緊張の連続。外ではピリピリしていることの方が多くて、スタッフは本当に「今日のお弁当、何だろう」って、それだけが楽しみで過ごしているんですよ。お弁当を食べている時間だけが同僚とちょっと雑談をしたり、ホッとできる時間だったりする。きちんと毎回お弁当が出るのはとても恵まれていることですが、10日間ずっとお弁当を食べ続けることには、つらい部分もあります。だからこそ、おいしいお弁当を、食欲のない人にも食べたいと思ってもらえるようなお弁当にしなくてはいけないと思います。10日間の会期中に20食を食べる人にとって、お弁当がどれだけ大事なのかという気持ちは、なかなか外部の方には分かってもらえないかもしれませんが…。

「お弁当選びはクリエイティビティー」 たまたま耳にした、マツコの言葉で覚醒!

実は私も映画祭に入ってお弁当を担当することになった時、最初はいやでしたよ。他の人は英語を使って仕事をしたり、マスコミの人の相手をしたり、映画祭スタッフといえばそういう仕事だと思われるじゃないですか。でも私はお弁当とゴミ処理のことばかり考えて、映画は一本も見られない。正直、悩んだ時期もありました。

それでもある日、たまたまテレビでマツコ・デラックスが「お弁当選びはクリエイティビティーよ」といっていたのを聞いて、「あ、そうだよな」って思ったんです。考えてみれば、こんな数の食事を扱うことなんてめったに経験できることではないし、やっぱり食は大事だし、じゃあ、もっと遊び心をもって楽しくやってみよう、と思いはじめました。

 

ここ数年の私のお弁当の選び方ですが、まずオープニングの夜はあまりにもみんな忙しくて、大変なので、ほとんど記憶に残らない。おいしいけど揚げ物がドーンと入っているようなリーズナブルなお弁当はここに入れます。初日なのでから揚げもおいしく食べられちゃう。二日目からは徐々に値段を上げつつ、間に格安なものも挟みつつ、真ん中でそこそこいいお弁当をいれておく。これはイベントが少し落ち着いて、みんな若干お弁当が気になりはじめる頃なんですね。その後少し飽きてきた頃にパスタのような飛び道具を入れつつ、器もバンバン変えつつ、最終日はクロージング・パーティーに行く人もいて一番数が少ないので、一番高いお弁当を入れます(笑)。そこで終わると「今年のお弁当はよかったね~」って、ほめられるんですよ。みんな後半の記憶しかないんですね、これでバッチリです(笑)

◆安田美保

(東京国際映画祭 オペレーショングループ 運営ユニット ユニットリーダー)

イベント制作、テレビ業界での仕事を経て、東京国際映画祭へ。今年で8年目。
ボランティア、インターン総勢330名がいる部署、事務局周りの設営、運営、全体のインフォメーションを統括しているチームのユニットリーダー。

 

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